ここ何年か前から日本企業が依頼してくるものに、「中国企業から頼まれてロシアで水産物を確保してくれ」、「木材を数万トン規模で欲しい」といったような、いわば中国〜日本〜ロシアという三国取引の依頼が増えてきた。
結論から言えば、私のところにくる依頼でいまだかつてこのような取引は一度も成立したことがない。
私自身の役目はロシアから依頼されたものを確保することにある、現物を探し出し、依頼側の希望金額で数量をまとめても、取引の成立を見たことがない。
これまでに中国がらみで依頼があった案件の総額を計算してみると、軽く100億は超えてしまうほどの金額になる。これは取引が成立していたらの毎年の取引額である。
中国から依頼があったものには、これまでに水産物、木材、鉄スクラップ、非鉄金属、鉱物資源など多彩である。どれも金額にすれば年間で数十億円になる取引ばかりだ。
私自身は日本企業の依頼なので、その依頼先を飛び越えて、発注元である中国企業とは直接話をすることがない、全ては日本企業からの依頼によって動くというスタンスを取っている。
中国がらみの依頼には必ず共通しているものがいくつかある。
@ 中国の依頼元は国営企業
A 取引の数量はどれも数万トン規模
B 急いでいる
C 現物があればすぐに検品に行く
これらは不思議と共通している、しかし急いでいると言ってこちらを煽りながら、依頼物を見つけてほぼ話をつめ、検品にいつでも来れるようにお膳立てをしても、またいつでも商談ができるようにしてあげても、これまでどこも一度として検品はおろか、商談にさえ一度として来たことすらこともないし、欲しい現物が見つかれば日本企業からも連絡が来なくなるというパターンである。
今度はロシア側のほうから、いつ検品に来るのだと何度も何度も連絡が入り、結局は迷惑をかけてしまう結果に終わっている。
馬鹿を見るのは毎回私とロシア側になる、世界一広い国土のロシアで希望するものを探し出し、商談ベースまでもって行くには、それなりの経費と時間と労力を要する、しかしこれらのものを一度として中国側では払ったこともないし、また依頼をしてきた日本企業もほおかっむりを決め込んで払ったためしがない。
これらを考えてみるときに、一番甘いのは私かもしれない。
ビジネスは信用で成り立っている、ご存知のように信用は一日で出来上がるものではない、長年かけて築き上げた信用は時として大きな力を発揮してくれる。ロシアにおいてこの信用は仲間としての証にもなっている。
私が自分の専門でないものの依頼を受けると、ロシアの政府機関の友人(仲間)に情報収集と紹介を頼むことにしている。これが一番確実で時間も短期間で済むからで、ビジネスにとって時間がかかればかかるほど出費がかさむからだ。
ロシアには日本や欧米のように、ビジネスにおける調査機関が発達していない、そのためには旧ソ連時代からロシアには国内のあらゆる情報を把握している機関が存在している、これはビジネス情報はおろか、個人情報までかなり深い部分までその情報を把握している。
幸いにもその機関に友人がいるので、ついつい相談してしまう。
ロシア人のいいところは、友人が困っていたり相談を受ければ、自分の仕事そっちのけで助けてくれることだ。
これまで中国がらみで依頼を受けたものは、水産物を除くと全て専門外のものであった。日本のビジネスでも分かるように、今まで一度も取引がないところに新しい商談を持ち込んで「ハイ、そうですか」ということにはならない。
ロシアもそれはまったく同じことである、しかしロシアは長い間社会主義国家としての社会を形成してきた国である、いまだにロシアにはその風潮がいたるところに残っている。政府の役人に弱いのである、70年以上も国家権力によって全てを統制されてきた歴史の中で、国民の意識の中に埋め込まれた遺伝子はそう簡単にはなくならない。
したがってその機関の友人に情報収集と紹介を頼むと、これまでほとんどの依頼において商談ができる状態になっていく。しかもスピーディーにである。
日本の大手商社の商社マンが数十億のビジネスをこなすために、どれだけの時間と経費を要するのか細かい数字は分からないが、ロシアに進出している商社のいずれを見ても、商社マンの人件費から経費の全てを含めると相当の経費がかかっている。
ビジネスの結果として「たら、れば」はよくないが、これまで中国がらみで依頼のあったビジネスが成立していたら、年間で100億以上のビジネスになるのは申し上げたが、中国企業にしても、それを受けた日本企業にしても、一円のお金も使わず人の褌で相撲をとろうとする根性だから、終わって後を振り返ってみれば妙に納得できるものがある。
私自身は中国の企業から直接頼まれていたら、おそらくやっていなかったと思う。日本企業の依頼だからこそ、また日本企業でも名もなき小さな企業であるからこそ、引き受けてきた。
これは私自身も名もなき一介の零細企業の親父であり、ビジネスマンだから、ロシアビジネスを大企業の一人勝ちにさせたくないという、変な意地もあるからだと思う。
これまで大企業からも仕事の依頼は入ってきた、大企業のずるさもあるが、人に何かを頼むときはそれなりの金額も払ってくれた、そのような基本的な常識はどこも持っていた、今思えば大きなビジネスができるところと、それができないところの差がこんなところにあるのかとあらためて発見できた気持ちである。
とりわけロシアにおいて、中国人はあまり好かれていない。これまでにも書いてきたことだが、日本人と中国人、それに韓国人が同じビジネスの話をロシア人に持ちかけたとしたら、ロシア人の9割は日本人と取引を希望する、理由は日本人が一番ずるくなく誠実であると判断しているからだ。ここで中国人や韓国人を中傷する意図はない。
今はロシア貿易に対して、日本も中国もまた韓国もまったく同じ条件である、むしろ日本より中国や韓国のほうが同じ陸続きであり、日本以上に国と国とのつながりはこれまでの歴史を見ても深いはずである。
その中国企業がしかも国営企業であれば、日本企業を仲介にしてロシアから輸入するものを探すというのもおかしな話である。
ロシアの対貿易国でも中国は日本よりその取引貿易額は、はるかに上をいっている、ロシアの対輸出国では4番目、対輸入国では3番目になっているのだ、日本は対輸出国としては10位以下であり、輸入国としては4番目に入っているがその上には中国がいる、その伸び率も中国が53%なのに対して日本は48%となっている。
中国人の商売のうまさなのかずるさなのか、自分では経費をかけずに日本企業をうまく使ってという意図が見え隠れしてくる。
最近では私のほうでも中国の国名を出すとすっかり信用がなくなってきつつある、なかには中国が最終的な受け取り国と聞くと拒否をする企業までがでてきている。
つまり日本を仲介にしてのロシア・中国間取引はほとんど相手にされなくなってきている。
ロシア側の情報機関からも、中国とロシアの貿易交通路の国境税関には、ロシア側の保税ヤードには中国に行くべき木材や非鉄製品などが中国側の通関ができないために、溜まっているとの情報もある。結局ロシア側の負担が大きくなって中国との取引を嫌がる企業が増えてきているのだ。



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